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『西の魔女が死んだ』を読んだ感想

はじめまして、かのえりと申します。

今回は梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』を読んだのでご紹介します。

主人公のまいと、「西の魔女」ことまいのおばあちゃんの物語です。

まいと自分が重なる部分が多く、切ない気持ちになったり、まいと一緒に成長できたように感じた本でした。

それではさっそく、印象に残った部分を中心に感想を書いていきます。

『西の魔女が死んだ』あらすじ


作品情報

書名:西の魔女が死んだ

著者:梨木香歩

出版社:新潮社

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

引用:新潮社

『西の魔女が死んだ』を手に取った理由

この本の存在はかなり前から知っていたのですが、書名からファンタジー要素の強い書籍だと思っていたんです。

当時ファンタジー系を好んで読むことはなかったので、長らく手に取ることはありませんでした。

ある日YouTubeの読書ブロガーさんの紹介を見て、自分の勘違いに気づきました…。

そこで改めて「どんな本なのだろう?」と興味がわき、手に取りました。

こんな人におすすめ

おすすめ

中学生

高校生

懐かしい気分になりたい人

自分と向き合いたい人

心に響いた内容

心に響いた内容をご紹介します。

扱いにくい子、生きていきにくいタイプの子

まいは母が父に、電話でまいのことをそのように言っているのを聞いてしまいます。

つらく悲しく思いながらも、母がそう言うのを認めてしまいました。

この部分を読んだとき、心がぎゅっと締め付けられました。

それと同時に、まいの気持ちが痛いほどわかり、心にストンと入ってきたんです。

私も学校に行くのが辛い時期があり、母に心配をかけるとともに面倒をかけていると思っていました。

私が「学校に行きたくない」と言った時の、母のなんとも言えない表情が忘れられません。

まいもきっと、どこかで諦めながらも申し訳ないと思っていたのではないでしょうか。

そして大人になった今、まいの母親の気持ちもわかるような気がします。

冷たい言葉でまいの様子を伝えていますが、これは自分自身への後悔や恥ずかしさもあるのでは…と。

子どもって親の考え方や行動をダイレクトに吸収しますよね。

だから、まいが一般的な道から逸れてしまった原因は自分にあるのでは…と思いながらも、自分を守るためにまいを「扱いにくい子」を表したのではないでしょうか。

自分の子どもに対してなんてことを言うんだろう…と思うのと同時に、すごく人間らしいなぁと感じました。

本書では主にまいの成長にスポットを当てていますが、まいの両親も一緒に成長して欲しいと思った部分でした。

胸が締め付けられるような寂しさ

まいは時々、ひどいホームシックに悩まされることがありました。

それは家にいるときにも起こることで、胸が締め付けられるような寂しさを感じると。

そんなホームシックを防ぐために、まいはおばあちゃんの家にいつも使っているマグカップを持っていきます。

この感覚、中学生や高校生の頃に私も感じたことがあります。

自分の家なのに自分の居場所じゃないような、どこかに本当の自分の居場所があるような気がしていたんです。

この本を読んでその気持ちを思い出しました。

今思うと、思春期特有の気持ちだったのかも…と思います。

そしてマグカップは、まい自身を表しているように感じました。

おばあちゃんはわざわざ自分のマグカップを持ってきたことには触れず、「いいカップね」とまいのセンスをほめてくれました。

ささいなことですが、この行動から「まいの居場所はここだよ。ここにいて良いんだよ」とおばあちゃんが伝えようとしているのではと思いました。

自分が楽に生きられる場所を求めていい

父親の住んでいる街へ引越す提案をされたまいは、転校することは根本的な問題を解決することではないのでは…と迷います。

そんなまいに、おばあちゃんは「自分が楽に生きられる場所を求めてもいい」と伝えます。

私たちは無意識のうちに、問題に立ち向かうことが良いことだと考えているのではないでしょうか?

問題に立ち向かって解決することでよりよい自分になれると…。

もちろん、その考え方も正しいと思います。

どういう風に解決するか、問題はなんなのかを考えることで大きく成長できるからです。

しかし、それだけが正解ではないとおばあちゃんはユニークな例えでまいに教えてくれました。

その言葉を聞いて、まいは父親のもとへ引越すことを決めます。

ここでまいの成長を感じたのが、逃げるためではなく新天地が自分にとって楽に生きられる場所なのか試してみる、という気持ちで引越しを決めたところです。

新しい環境に飛び込むのは大人でも躊躇しますよね。

今より良い環境になるのか、もっとひどい環境になるんじゃないか…そんな不安に駆られて動けなくなることもあります。

それでもまいは「試してみよう!」という気持ちで新しい一歩を踏み出します。

まいの強さを感じた部分でした。

まとめ

今回は『西の魔女が死んだ』をご紹介しました。

物語を通して、おばあちゃんの言葉が持つ力に何度も励まされました。

どこか不思議な雰囲気を持っていて、まさに「西の魔女」という名前が似合うおばあちゃんでした。

自分の勘違いから読むのが遅くなってしまったことをとても後悔した作品です。

思春期だったかつての自分を優しく包み込んでくれるような世界観でした。

切ないような、懐かしいような気持ちを思い出させてくれます。

現在思春期を迎えている世代はもちろん、懐かしい気持ちになりたい方にもおすすめの本です。


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